秩父江戸巡礼古道の旅〜最終日〜
札所三十一番~三十四番まで。
3月26日(土)はれ。最高気温12℃、最低気温1℃。
いよいよ最終日。巡礼日和の良い天気に、気合も十分。
毎日同じ時刻の同じ電車に乗って秩父までやって来ていたので、親しみのある土地になっていた。
今日は札所三十四番まで、結願を目標に歩く。
秩父駅から8:25発の栗尾行きバスに乗り、昨日の最終地点栗尾バス停まで。
土曜日という事もあってバスの中にもバックパックを背負った人がいた。レンタサイクルの場所で降りる学生や、バスの車窓からは歩いている人などが見られた。
9:10 栗尾バス停出発
バス停から札所三十一番まではゆるやかな登り魚。何気に距離はある。
途中には、たらちね観音と紫雲山地蔵寺があった。この水子地蔵寺は話を聞いたことがあったが、見るのははじめて。
お地蔵さんの数に圧倒され、しばしポカンとその場に突っ立ってしまう。風車が風でカラカラカラと回っているのは寂しい風景だが、お地蔵さんは皆きれいで、きちんと手入れされている感じがした。
ガードレール下に秩父や西国の札所などが書かれてあって面白かった。
9:50 札所三十一番鷲窟山(しゅうくついん)観音院(かんのんいん)着
仁王門からは急な登りの石段が続く。「やくよけかいだん」と彫られたところからはじまり二百九十六段あるそうだ。
般若心経の二百七十六字と普回向二十字の合計数あるといわれ、一段ずつお経を唱えながら登っていくと厄除けになるそうだ。暗記はしていないので、手に持って般若心経を唱えながら登る。
本当に階段が多いな。途中には巡礼者や吟行会の句碑が数多くあるが、息が上がってあまりそちらには注意がいかず。
上まで登ると、奥へと続くハイキングコースへ向かう人や巡礼にきた人とすれ違い挨拶。色んな人に会うってやっぱり嬉しい。
納経所で御朱印を頂くと、丁寧にお寺の説明をしてくれ、案内もしてくれた。とても嬉しい。
岩には石仏が彫られていた。全く気が付かなかったのでびっくり。そして本殿の写真を取り忘れるという。やっちまったー。次の札所へはバスを進められたが、「全て歩きたいので」と断る。
10:50 栗尾バス停再着
ここから先はしばらく小鹿野町の街中を通るので、その風景を撮りながら楽しんで進んだ。
11:35 小鹿野町役場着
「欅の大木」辺りでは高校生くらいの子がうろうろしていたので、ここも聖地かな?と見上げる。
確かに大きな木だなあ。
12:00 大日峠入り口着
ここから本日一番目の峠越え。杉林の中を歩く。ここは歩いていてとても気持ちの良い場所だった。お天気が良かったせいもあるが、横には沢が流れ、地面はふかふかとしている。
色んな植物が芽吹いていて春を感じられた。おすすめのルートかな?
おお、熊さんも出るのね。
一番怖い熊さん注意の看板。
13:10着 札所三十二番般若山(はんにゃさん)法性寺(ほうしょうじ)着
季節の花が咲くのか「花浄土」の看板が。きれいなお寺で、とても丁寧に整備されているなと感じた。いろいろなグッズも販売されていたので好きな方は楽しめるだろう。
土足はいや!はい。珍しい。
観音堂から奥の院へ行く道があったらしいが、気付かなかった!岩壁をよじ登っていく道らしいので今度行った時は頂上まで登りたい。
休憩所で少し休み、どうしようかと思案する。
まだまだ先はあるので、このままのペースだと今日中に結願出来ない気がする。
もう一日増やすか?いやいや、今日全部回ると自分で決めたではないか。とりあえず行ってみようと歩き出す。時間が気になるので、お昼は歩きながら食べる。
一人で巡っている女の子と一緒になったり、山ガール風の二人組とすれ違ったり。休みの日になると意外に巡礼者がいることに驚いた。
そしてここから迷う!今までの標識が嘘のように道しるべが少なくなり、どちらへ行くかで毎度悩む。今までで一番大きく道から外れ、現在地がわからなくなる。一体今どこにいるの!?
周りに人もいなかったので、仕方なくスマホで現在地を調べて元のルートに戻る。
距離も長い三十番以降は、歩いて巡る人も少なくなる傾向があると聞いた記憶が。この松井田のバス停近辺は迷いやすいので、もう少し標識があると嬉しい。
14:50 松井田バス停着
着いて良かったー。ほっと胸をなでおろす。
このペースでは時間内に札所三十四番までは無理だと悟り、納経時間を諦めることに。なのでゆっくり行くことにしたら気持ちも楽になった。焦りは禁物です。
15:15 札所三十三番延命山(えんめいさん)菊水寺(きくすいじ)着
この眺めはマップで何度も見た桜並木!まだ咲いていないよ…桜の下を歩くのを楽しみにしていたのに。へこむ。
まあ、札所三十四番の御朱印をもらいに来るので、その時に再度寄れば良いではないか。
とても静かなお寺で、本堂の中に納経所をはじめ全てすっぽり入っていて不思議な感じがした。心地よい時間が流れ、落ち着いたイメージ。
道を進むと菜の花がきれい。
畑の小道を抜けて土手を歩いたりと面白い。
16:05 道の駅龍勢会館着
足の裏が痛くなり、休憩しようと立ち寄る。靴を脱いだらマメが…あちゃー。左の膝が痛くてかばった歩き方をしていたからおかしな部分に力が入ってしまったみたい。
バンドエイドとテーピングは絶対いらないと思っていたけど、なんでも持っているに越したことはないと実感。左足の裏をぐるぐるにすると随分楽になった。
16:35 奈良橋信号前着
打ち止めにするならここで決断しないと。マップの時間ではあと二時間くらいかかる。迷ったが、歩くことに。今思うと意地になってたな。
山の中にはかわいい花が咲いていて和んだ。
秩父事件の石塔もあった。
17:05 札立峠登り口着
いよいよ最後の峠越え。辺りは暗くなってきているし、熊さん注意報出ているし怖いよー。
引き返すなら今しかないぞ、いやいや、ここまで来て何を言っているんだ。今日中に行くんだろう?という心の葛藤を続けること五秒間。よし、行くぞ。
注:決しておすすめは出来ません。くれぐれも時間に余裕を持っていく事をおすすめします。
細い山道を登って行く。登りが、きつい。何度も立ち止まって息を整えながら先へ進む。この地点で来たことを若干後悔。
何よりも怖いのが熊さん。どこかで誰かが見ている気配する!本気で、涙出そうなほど怖かった。動物の足跡を見付けるたびに「これって熊じゃないのかな…?」と思い、恐怖は倍増。
既に約27㎞の道を歩いて来て、足もぼろぼろ。だが、足が痛いなんて言っていられずにピッチを上げる。先生に付いている熊よけの鈴をめちゃくちゃ大音量でしゃらしゃら鳴らしながら歩く。
17:35 札立峠頂上着
なかなかに早いペースで峠に到着。肩で息をしながら立札を見る。巡礼の格好した人の絵が書かれていたけど、夜道は怖くなかったのかな?自分は怖いよ。夜道というより熊が怖いよ。
平石馬頭尊堂(奈良橋信号前付近にある)から札所三十四番までは江戸古道の雰囲気を十分味わえるとマップに書いてあったが、十二分に味わえた。
山の斜面に道を作ったという感じなので、 細く、ところどころ木で補強はしてあるが一歩間違えば斜面を転がり落ちそうだった。
これを見た時は本当にほっとした。
18:00 札所三十四番日沢山(にったくさん)水潜寺(すいせんじ)着
着いたー!無事なんとか着きました。予定より一時間オーバーだったけど、無事結願しました。
お参りを済ませてホッと一息。本当に良かった。辺りは暗さが増し、ぼんやりしていて良く見えなかった。こんな中をよく峠越えなんてしたものだと苦笑。観音様も呆れているかな。
無事、歩き通せた事を心から感謝。ありがとうございます。
改めてお参りに来たいと思います。
写真を撮っていると、いきなり裏山から岩が落ちてくる音が「ゴロゴロ…」と。
え!熊!?と先生を掴み鈴を鳴らして威嚇。誰もいなかったけれど、もうこれ以上は危ない(?)と思い、歩き出す。
これは本っ当に怖かった。
山でキャンプをしている時に、うしろで「ガサガサ」と音がして咄嗟に逃げたという知人の話に大笑いしていたが、実際は笑えない。
18:35 秩父温泉満願の湯着
温かいお湯に浸かり、全身から力が抜けていく。色々あった五日間だったな。でも、歩くのはとても楽しかった。お礼もかねてまた巡りたい。
最後はドタバタで締めくくったけど、無事に結願出来てなにより。
わらじかつ丼、めっちゃ美味しかった。
功徳を積むというよりは、自分自身と向き合うための巡礼だったけれども、諦めずに歩き通せてよかった。
ここまで来れたのは、この地での出会いや小さな驚きの数々。ほんの些細な出来事が大切な思い出になって、自分を奮い立たせてくれたからだと思う。
旅を通して人のやさしさに触れ、山では熊に怯え(笑)、道中ひたすら歩きながら自問自答を繰り返した。
そんな短期間で何が変わるんだ?という人もいるかもしれないけど、自分にとってはとても良い機会だった。
ps.支えてくれた先生、ありがとう!また巡礼の旅に出る時まで。
総歩行距離:31.2㎞(31,179歩)
全日程歩行距離合計:115.3㎞
使用金額:8,850円
(御朱印300円・御影200円×3=1,500円、お賽銭30円、交通費5,590円【満願の湯から皆野駅までタクシー、送迎は平日のみ】、温泉900円、夕食830円)
五日目のルート。
使用したマップはこちら。
御影(札所三十一番~三十三番まで)